相続登記とは、「相続による不動産の登記名義の変更」のことを指します。不動産の登記とは、法務局で管理する登記簿に、どこにあるどんな土地・建物に関して、所有者がだれで、担保権が付けられているかどうかといった情報を記録するものです。これによって第三者に対し、その不動産の権利を公示する制度です。
相続で不動産を取得したら、亡くなった人の名義で登記されていた土地または建物を自分の名義に変更する「所有権移転登記」を行うことで、その不動産の所有者になったことを公に示すことができます。相続後にその不動産を売却したり、賃貸したりする場合、先に相続登記を済ませておくことが必要です。
相続登記の流れ4ステップ
不動産の登記は、その不動産の所在地を管轄する法務局で行います。不動産登記の専門家である司法書士に依頼するケースも多いですが、もちろん手順を知っていれば自分でもできるので、まずは流れを確認しておくと良いでしょう。
まず亡くなった人が不動産を所有していたか確認する必要があります。
最も簡単な確認方法は、毎年4月頃に役所から届く「固定資産税納税通知書」を調べることです。亡くなった方宛に毎年届いていたか確認しましょう。
ただし、固定資産の評価額が免税点未満の場合、その不動産については課税されないため、納税通知書に記載されていないことがあります。その場合は、役所で「固定資産評価証明書」を取得しましょう。
相続人による遺産分割協議で遺産の分け方を話し合い、誰がどの遺産を取得するかを決めることになります。決めた内容に全員が合意したら、それを遺産分割協議書にまとめ、相続人全員の署名・実印捺印をします。
なお、遺言書がある場合は、遺産分割協議をすることなく、その遺言内容で相続登記することが可能です。
相続登記に必要な書類は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本の一切、戸籍の附票(本籍の記載付き)、固定資産評価証明書、各法定相続人の現在戸籍謄本・印鑑証明書、不動産を取得する相続人の住民票など複数あります。ケースごとに必要となる書類が変わりますので注意が必要です。
登記申請書は法務省のホームページで様式をダウンロードできます。記載例もついていますので、それをもとに作成してください。
現在は法務局で実施する「法定相続情報証明制度」を利用し、法定相続情報一覧図の写しを入手すると、その写しが相続登記のほか、金融機関の相続手続きにも利用できるなど、大変便利です。相続登記の申請時に、一緒にこの制度を利用して一覧図の写しを入手することもできます。提出した戸籍関係の書類も返却されるので、申請前に相続関係がわかる一覧図を作成しておきます。
対象の不動産の住所地を管轄する法務局へ行き、不動産登記の窓口で登記申請書と添付書類一式を提出して申請します。登記申請には登録免許税の納付が必要で、先に別の窓口でその分の収入印紙を購入し、申請書に貼り付けて提出します。
法務局での書類の審査と登記には1週間~10日くらいかかります。無事に登記が済んだら、登記識別情報の通知や登記完了証を受け取れるので、そのまま大切に保管します。
相続登記の義務化
令和6年4月1日から相続登記が義務化されました。これにより、相続により所有権を取得したことを知った日(遺産分割が成立した場合は、成立日)から3年以内に相続登記をしなければ10万円以下の過料の対象となるおそれがあります。なお、法改正前に相続が発生している場合は、令和6年4月1日から3年以内に相続登記をしなければならないのでご注意ください。
遺産分割協議が成立した場合は早めに「相続登記」をすべきですが、早期の成立が難しい場合、過料のリスクを避けるために「相続人申告登記」をすることをお勧めします。
早期の遺産分割が難しい場合は「相続人申告登記」を
期限内(3年以内)に相続登記の申請をすることが難しい場合に簡易に相続登記の申請義務を履行することができるようにする仕組みとして、「相続人申告登記」が新たに設けられました。
ただ、相続人申告登記は、簡易に義務を履行することができる一方で、不動産についての権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、別途、相続登記の申請をする必要があることに注意が必要です。
相続人申告登記の必要書類は次のとおりです。申告書は法務省のホームページからダウンロードすることができます。
①申出人が登記記録上の所有者の相続人であることが分かる戸籍の証明書
②申出人の住所を証する情報(住民票等)